心理療法(精神療法)の種類は、大きく分けて2つあります。
『個人療法』と『家族療法』です。
とても簡単に述べてしまえば、個人療法とは、”クライアントが抱える問題は、その人個人だけの問題”であるということ。
たとえば、その人の人格、遺伝、思考の傾向や個人的な過去の経験などが、その人の心に問題を起こさせている・・・といったように、原因はその人の中にあるという考え方です。
一方、家族療法をとても簡単に述べれば、問題のある個人は、ある特定の環境に置かれていたために、そのようにふるまわなければならないのであって、その人の人間関係を含む、様々な環境要因との関連性に焦点をあてるものです。
これは、先に述べた個人療法の基本的な考え方とは、”全く”異なります。家族療法は、その考え方の特徴から、『システムズ理論』とも言われています。
つまり 家族療法 = システムズ理論 です。
個人療法と家族療法の違いが、面接に来る方にどの様に影響するのでしょうか?
私は、どちらの理論も完璧ではないと思っています。人間の抱える悩みや人間関係というのは、一つの理論で説明しきれるほど単純ではありません。
にもかかわらず、ここでわざわざ私がこの二つの療法の相違点を述べるのには、2つの理由があります。
個人療法と家族療法は、どちらも同じ領域を扱いますが、その得意とする領域が違うという事。
もう一点は、個人療法であれ家族療法であれ、どの理論によって立つかは、専門家にとって、ベストな面接を行なう上で、大事な事なのです。
そしてこの2つの理由は、最終的には、面接に来られる方が、より適した面接を受ける権利を守ると同時に、療法家自身の専門的見解が尊重される権利の両方を守る事であると思っています。
ある果物があったとして、それが傷んできたとします。
個人療法的に考えれば、ダメになった理由をこう考えます。
・ 古かったのか?
・ 傷みやすい種類か?
・ 虫に食われたのか?
・ 配送の途中でぶつかったか? etc.
家族療法的に考えるとこうなります。
・ ダメになりかけているくだものの隣には何が置いてあるか?
・ そしてそれと接触しているか?
・ 上から何か重いものが乗っていたためにつぶれたか?
・ いつ(置いてからの時間経過)置いたのか?
・ どうやって(丁寧に梱包して、あるいは乱暴に)置いたのか?
・ どこに置いたのか(日のあたる場所か、冷暗所か)?
当然ながら、同じ果物で、同じだけ新鮮でも、上記のような条件が異なれば、すぐに傷むものもあれば、日持ちするものも出てきます。
個の性質だけで判断することは難しいと考えているのが 家族療法=システムズ理論 ということです。